「桑の弓 蓬の矢を以て天地四方へ射祓えば 諸魔、障碍神は大海、天地の底へ射落とさん!」
ドォンッと腹に響く轟音を立てて天井から三本の光の稲妻が降り注ぐ。足裏に静電気が走った時のようなビリッとした痛みを感じた。激しい光に目の奥がズキッと痛む。咄嗟に目を瞑って顔を背ける。焦げ臭い匂いがふわりと漂ってきた。
「鶴吉ッ!」
緊迫した声で名前を呼ばれてハッと顔をあげると、天司の大きな手が目の前に迫っていた。
不死身かよこいつッ!
避けるのも間に合わず、その太い手が鶴吉の首を掴んだ。ぶらりと足が浮いた。首の骨が伸びる感覚がして咄嗟に天司の腕を掴む。肺に空気が入ってこない。
この野郎、と瑞祥が叫び飛び出した。天司の背中に飛び蹴りを入れようとするも、大きな翼で身体を横殴りされ奥の壁まで吹き飛ぶ。
激しく背中を打ち付けて床に崩れ落ちた。意識が飛んだのか立ち上がらない。
首筋に爪が食い込む。鎖骨に雫が流れる感覚がした。
「身体を護る神自凝島 髪肌を護る神八尋之殿 魂魄を護る神日之大神 心上を護る神月乃大神 行年を護る神星乃大神 謹請甲弓山鬼大神此の座に降臨し 邪気悪鬼を縛り給え 無上霊宝神道加持 謹請天照大神 邪気妖怪を退治し給え 天の諸手にて縛り給え 地の諸手に縛り給え 天地陰陽神変通力……!」
亀世の奏上と共に、無数の白い光の輪が天司の身体を縛り付けた。僅かに眉根を寄せた天司は、全身に力を込める。筋肉が盛り上がり全身の筋が浮き出た。数秒後、パンッと光の輪は弾け飛ぶ。
天司がもう一度翼をはためかせた。強風が亀世の軽い体を軽々と浮かせて、壁に叩きつける。その拍子に眼鏡が滑り落ち、青白い顔が見えた。
「かめ、よ……ッ」
「この状況でも他者を思いやるか。人の子とは誠に愚かで、美しい」



