瑞祥が唇を噛んで俯いた。
悔しい気持ちも怒りも、悲しさも寂しさも、全部わかる。全部わかるからこそ、生きて欲しい。
「仇討ちが二倍になるのは面倒なんだってさ」
隣に並んだ。胸の前で柏手を打つ。
瑞祥の瞳が揺らいだ後、瞳に涙の膜が張ってプッと吹き出した。
「なんだよ、そんな理由かよ」
「ひでぇよな」
「私が死んだら、お前らだって仇討ち二倍になるんだぞ」
「アハハッ、確かにそれは面倒だな!」
三人の、スッと静かに息を吸い込む音が揃った。鶴吉の静かに押し出すような声と、亀世の平坦ながらも透き通る声、瑞祥のよく通る凛とした声が合わさり、重なり、ひとつの祝詞を作り上げる。
最後の一句が奏上されたその瞬間、卵色の半球が眩く光って全方向に光の帯を発する。光に貫かれた暗紫色の残穢が解けるように消失していく。
「私たちは神職だ。戦うなら、言祝ぎで戦え」
ああ、とふたりが頷く。
「怒りで戦うな。俺たちは守るために戦うんだ」
ああ、とふたりが笑う。
「私たちには、仲間がいるからな」
互いの背中を強く叩く。腕に熱を感じる。隣には、二人がいる。同じ方向を見つめる仲間が。
天司が翼をはためかせた。振り上げられた拳が目の前に迫ってくる。瑞祥が軽やかな身のこなしでそれを受け流した。
「生魂 足魂 玉留魂 国常立命!」
亀世が心身強化の祝詞を奏上する。瑞祥の攻撃が重くなるのが見て取れた。
「畳み掛けろッ!」
そう叫んで柏手を打つ。



