言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


そこまでは考えていなかった。けれど体がそう動いていたのは事実だ。怒りに身を任せて、自分のことはおざなりになっていた。


「私も同じように考えてた、でも今わかった。それは違う。それは間違いだ。お前が死んだら、私はどうなる」


視線が絡む。割れた眼鏡の奥で不安げに瞳が揺れている。


「お前が死んだら、仇討ちも二倍になるだろ。面倒だからやめてくれ」


その皮肉に隠された本音は、久しぶりに見せた涙が全て物語っていた。

ずっと一緒にいた、どんなときも。俺は双子だから知っている。

こいつは皮肉屋で、意地っ張りで、口も悪くて態度もデカい。けれど人一倍に臆病で、その臆病を隠すためにそう振舞っていることも。


「……亀世も、同じように考えてたんじゃん」

「悪いかよ。でも鶴吉もそう思ってたんだろ」


体を起こすと亀世が腹の上から降りた。二人同時に立ち上がる。会話はない、双子だから分かる。もうそれ以上の会話は必要ない。


「おい! 話し合いが済んだなら早く手伝えよ鶴亀!」


胸の前で必死に手を合わせる瑞祥が悲鳴をあげた。その隣に並んで柏手を響かせた亀世。


「おい瑞祥、お前もだぞ」

「はぁ!? 何がだよ!」

「自分を犠牲にしてまで仇討ちしようなんて考えるなよ」

「そ、そんなこと考えてねぇよ……!?」


声が裏返った。わかりやすくてありがたい。