その時、両肩を強く後ろに引かれて尻もちを着いた。突然のことに目を丸くして顔をあげる。
小さな背中が二つ、鶴吉を守るように前に立ちはだかる。
「ひふみよいむなや こともちろらね しきるゆいつ わぬそをたはくめか うおえにさりへて のまふあせえほれけッ!」
「掛けまくも畏き伊邪那岐大神 筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 御禊祓え給いし時に生り坐せる祓戸の 大神等諸の禍事、罪穢有らむをば 祓え給い清め給えと白す事を 聞食せと恐み恐みも白すッ!」
三人を卵色の半球が包み込むと同時に、残穢が半球の外で渦巻きゴォォッと音を立てて吹き荒れる。
「少しの間任せるぞ瑞祥!」
「おう! ゲンコツくれてやれ!」
そんなやり取りの後、亀世が無表情で振り返った。大股で歩いてくるなり鶴吉の上に馬乗りになって、その胸ぐらをつかみ勢いよく頭突きを食らわせる。
「つぁッ……! ゲンコツじゃねぇのかよ!」
「いい加減にしろよこの馬鹿ッ!」
胸元に暖かい雫が落ちた。ハッとする。亀世が泣いていた。妹の泣き顔を見たのは、十数年ぶりだった。
「何勝手にブチ切れて突っ走ってんだよ! デタラメに呪詞なんか唱えて、案の定呪詛返しに対応できてないじゃないか!」
「あっ、あれは対応できてなかったんじゃなくて」
「聖仁の仇をとれれば、自分はどうなってもいいと思ってたのか!?」



