一人の人間。その言葉がやけに耳に残った。
ずっと亀世とセットにされてきた人生だった。双子なのだから当たり前、それも稀な方の双子なのだから、そうされるのは当然のことなのだと受け入れていた。
『もし二人が呪と言祝ぎを分けて生まれたとしても、俺は友達になってたよ。双子がどうとか関係なく、俺は鶴吉と亀世って人間が好きだから』
どくんと心臓が跳ねて、鳥肌が立つ。どうしようもなく嬉しくて、泣きたくなった。
それが悔しくて誤魔化すように竹箒で聖仁の尻を叩いて逃げ出す。『何するんだよ!』と聖仁が叫んだ。
双子として敬遠される日々の中で、初めて家族以外の人間から個人として認められた。普通の人からしたら当たり前のそれが、自分たちにとってはどれほど嬉しいことなのか、きっと誰にも分からないだろう。
光みたいなやつだった。その場にいるだけで周りを明るくするような。
────そんな親友を、こいつが奪ったんだ。
聖仁が殺されて、何も感じなかったわけがない。
壁がへこむほど、拳に血が滲むほど、唇が噛み切れるほど、声すら涙すら出ないほど、悔しくて悔しくて、腹が立って憎かった。
目の前に迫る残穢を無視してまた再び手を合わせた。
昔、興味本位で文殿の禁書の棚を片っ端から漁ったことがある。だから呪詞は山ほど知っている。相手を苦しめて傷付けて呪い殺す方法だ。



