「子供を殺すことが、矜持に反するなら」
天司を警戒しながら瑞祥の顔を見た。悔しさに歪んだ唇、頬には大粒の涙がこぼれている。それが痛みで溢れた生理的な涙でないことはすぐに分かった。
「────なんで、聖仁を殺したんだよ」
ずっと疑問に思っていたことがある。
後輩や亀世から聞いた話では、聖仁が殺された瞬間は誰も見ていなかったらしい。振り返った時にはもう呪殺されていて、倒れた体を呆然と見下ろすことしか出来なかったのだとか。
だとしたらなぜ、あの夜あの場所で、他の誰でもなく聖仁が殺されたのか。
「聖仁? 一体誰のことだ」
瑞祥の顔が瞬く間に怒りで赤くなった。今にも飛び出しそうな瑞祥の手首を咄嗟に掴んだ。身体がつんのめった瑞祥が足を止める。鶴吉のことなど気にもとめず、今にも天司を刺殺しそうなほど憎しみの籠った目で睨みつけている。
「お前が呪殺した男だよッ! 数ヶ月前の夜、神社で高校生を殺しただろッ!」
「ああ、あの少年か」
天司はひとつ頷いて目を細める。
「折良くそこに立っていた、故に殺しただけ」
は、と乾いた声が漏れた。
「芽さまから、"誰であろうと構わぬ。巫寿という名の少女の縁者を殺せ"と命じられた。ゆえに従った。それまでのことよ」
瑞祥の手を掴んでいたのは、掴むことで自分を落ち着かしていたからだ。握りしめすぎた反対の手の拳が小刻みに震えている。
そんな理由で、お前は。
俺たちの親友を殺したのか。



