「鶴吉、立てるか? 頭はぶつけてないな?」
亀世が膝をついて鶴吉の頬を軽く叩く。答えようと口を開いたところで亀世の指が口の中にずぼりと入ってきた。
それと同時に舌の上に錠剤のような何かが乗せられる。とてつもなく臭いそれが口の中にじわりと広がって思わず嘔吐くと、「飲み込め」と鼻をつままれた。
そこそこ大怪我を負ってる兄貴になんてことをするんだよ、と目で訴えながら臭い何かをゴクリと飲み込む。飲み込んだ瞬間、カァッと腹の底が熱くなる感覚がした。
「いわゆるドーピングだ。瀕死の怪我でもあらビックリ、三時間は痛みを感じない」
「それ、根本は解決してねぇだろ」
「だから豊楽先生の使用許可が降りてないんだよ」
最悪だ。天司よりも先に妹に殺される。
亀世の薬のお陰で、確かに立てないことはない。なんなら気分が昂っている。やたらと顔が熱い。
口の中の血と一緒に残った臭みも吐き出した。手を借りて立ち上がる。瑞祥の回し蹴りを天司が片腕で防いだところだった。
ほぼ同時に走り出す。若干足元がおぼつかないのは痛みではなく別の部分にありそうだ。
「……お前これ酒入れただろッ!」
「舐める程度なら御神酒扱いだろ」
足首を掴まれて、投げ飛ばされた瑞祥を両手で受け取る。すかさず亀世が煙玉を放り投げて、視界が悪くなった隙に距離をとった。



