言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


当たった際の痛みはなかった。脳みそが揺れたのか一瞬意識が遠のいて、自分の体が壁まで吹き飛ばされて柱に背中を強く打ち付けた痛みで意識が浮上した。

あまりにも突然のことで受け身が取れなかった。もろに背中全体を打ち付けて呼吸の仕方を忘れたかのように息が止まる。亀世たちが自分の名前を叫ぶ声が遠い。プールの中に潜っているようなくぐもった音だった。

最初に狙われたのが自分で良かったと思ったのは腐っても兄貴だからだろうか。

何とか息を吸い込むと、漫画のカキモジなんかで見るような「カハッ」という音が自分の口から漏れた。


────翼で加速とか、反則だろ。


何とかうっすら目を開けると、天司がまた大きく翼を開いたのがわかった。指一本動かせない状況でできたのは、痛みに備えることだけだった。ぐ、と奥歯を噛み締めたその時。


吐菩加身依身多女(とほかみゑみため) 寒言神尊利根陀見(かんごんしんそんりこんだけん) 祓い給え清め給えッ!」


瑞祥の性格で素早い祝詞奏上が室内に響き渡ると同時に、天井が勢いよく崩れ落ちて半歩先が瓦礫の山になった。

突然崩れ落ちた天井に反応しきれなかった天司が瓦礫の山に突っ込む音がした。その好きに這い出して影に寝転がる。

とほかみゑみため祝詞、神を味方につける祝詞だ。おそらく天井が崩れ落ちたのは神の采配だろう。