言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー



今日を逃がせばこんな機会はもう二度とない。聖仁の仇を取る、それを願う気持ちは自分だけのものじゃない。

とりわけ、アイツは誰よりもそれを願っているはずだ。

表情には出さないが、白くなるほど握られた拳が瑞祥の今の感情を物語っていた。そっと上から包み込んで握った。鶴吉は瑞祥の肩に手を置く。

深く息を吐いた瑞祥が鶴吉の手を軽く叩いた。


「……大丈夫、取り乱したりはしてない」

「ああ、分かってる」

「忘れんなよ。俺らも同じ気持ちだ」


ああ、と声にならない声で答えた瑞祥は真正面から天司を睨み付けた。もう復讐の炎だけに染まった目ではなかった。


「作戦通りに」


亀世の言葉に頷くと同時に、二人は一斉に柏手を打ち鳴らす。亀世は後ろに飛び退いて、それと同時に二人の前に結界を張り巡らせる。


「かけまくもかしこき 風神の御前に恐み恐みも白さく 願はくは御息吹を賜ひて 我が願ひ聞こし召し 御力もて成し遂げさせ給へ」


天司が錫杖を振り下ろした。鎌のように鋭い風が結界に当たって霧散する。

バーカ想定済みだよ、と亀世が口角を上げた。


「────離れ、吹き散らされ給へッ!」


鶴吉と瑞祥の声が揃ったその瞬間、周囲の空気がドッと一箇所に凝縮された。小指の爪程度の大きさに凝縮された空気は螺旋状に回転しながら目に見えない速さで宙を横切る。