言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


目的の部屋は障子が吹き飛んでおり中から明かりが漏れていた。

三人が足に力を込めたその時、目の前を紫色の布がはためきながら横切った。一瞬気を失った神職の顔が見えた。バキバキッ、と廊下の壁に背中を打ち付けたその神職はそのまま廊下に力なく倒れ込む。


「鶴吉、瑞祥、フォロー!」


亀世の掛け声とともに略拝詞を唱えた二人が侵食の前に立ちはだかった。鎌のように弓なりになった空気の塊が、二人の結界で弾け飛ぶ。

その後ろで素早く治癒祝詞を奏上した亀世が、神職の足を掴み引きずって部屋の前から遠ざける。


「お前が、天司か」


瑞祥が震える声で静かに尋ねた。その声には紛れもない激しい怒りが込められている。

亀世は壁の影から中を覗き込んだ。山伏のような結袈裟(ゆいげさ)を身にまとい、錫杖を手にする大男。背中には漆黒の羽根の翼を持ち、眉間には皺を寄せ、唇を横一文字に結んだ強面の赤ら顔。

忘れもしない。親友の命が散ったあの夜のこと、親友の命を奪ったあの顔を。

中にいた人物がすっと目を細めて二人を見聞する。


「────いかにも」


全身が震えた。武者震いだ。今目の前に聖仁の仇がいる。

反射的に飛び出しそうになったところを、鶴吉に肩を掴まれた。


「今日で、仇を取るんだろ。落ち着け」

「……悪い」

「謝るな。俺だって出会い頭に一発お見舞いしたいくらいだった」


自分の腕を握る鶴吉の手を軽く叩いた。ひとつ頷いた鶴吉はゆっくりと手を離す。