廃神社の中へ入った途端、吹き飛ばされた黒狐が自分たちの右隣の壁に背中から打ち付けられていた。
止まるのは危険だと判断してそのまま突き進む。亀世と瑞祥もちゃんと着いてきているようだ。
ゴォッと妖力を燃やしながらこちらに流れてきた怪し火を略拝詞で弾き飛ばす。腕で顔を守り霧散した火の粉から身を守る。
「鶴、亀! 伏せろ!」
瑞生の声が聞こえて反射的に体制を低くすると、頭上を瓦礫が猛スピードで横切った。
瑞祥にそう呼ばれたのは随分久しぶりな気がする。
小さい頃は今よりももっと色んな悪巧みを企てては、「鶴」というコードネームを名乗ってイタズラし回って罰則を食らった。
ちなみに「亀」が亀世で聖仁は「サイヤ人」、瑞祥は「ダマビー」だった。ダマビーは亀世が命名したもので、"黙っていれば美人"の略だ。瑞祥はダマビーが気に入っているので、この由来は瑞祥以外の3人だけが知っている。
昔のことを思い出したからか昂っていた感情に少し余裕が芽生えた。
「ナイス、ダマビー!」
口角を上げて振り向かずに拳だけを後ろに突き出す。「おう!」と瑞祥が己の拳をぶつけてきた。
荒れ果てた廃神社は、中で戦闘が始まってからより一層酷い有様になったのだろう。屋根は一部が崩れ落ち、廊下はあちこちが抜けている。怪し火が瓦礫に引火したのか、黒い煙が僅かに充満しており目に染みた。
その時、ドォン、と大きな塊がぶつかったような激しい音がして建物全体が悲鳴をあげるように軋んだ。
目指している方角だ。



