言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


「つまり狭い部屋を目指せばいいってことか?」


ああ、と頷いた亀世は小石を拾うとガリガリと土を削って廃神社の間取り図を書く。屯所内で作戦会議する幹部陣の書類を盗み見たらしい。

そして、東側の小さな四角にザッと丸をつける。


「恐らく追い込むとしたらここだ。この部屋は太い梁が通っていて、他の部屋より天井が低い。おい鶴吉、場所覚えろ。お前が先頭で走ってもらう。できるだろ」


無茶苦茶だろ、と苦言を呈しつつ現在地からのルートを十秒で頭に叩き込んだ。


「覚えた。出られる」


よし、と口角を上げた亀世が地面の間取り図を足で消した。


「先鋒に鶴吉、その後ろから私が指示を出して、瑞祥は隣で背後に警戒してくれ。この陣形で進むぞ」


おう、と瑞祥が少し緊張した面持ちでひとつ頷いた。緊張しているのかいつの間にか手のひらには爪のあとがくい込んでいる。開いた両手を軽く振って、もう一度握り直す。その手をトンと胸に当てて笑った。


「ここには、聖仁がいる」


まるで自分に言い聞かせるように、そう呟く。亀世にもそれが聞こえたのか目が合った。

二人は同じようにトンと胸を叩く。


「ここには、聖仁がいる」

「ここには聖仁が」


はっと顔を上げた瑞祥。目元が赤い。目尻に溜まった雫を乱暴にぬぐい取ると、ずず、と盛大に鼻をすする。そしてニイッと白い歯を見せて笑った。


「聖仁と共に────行くぞ」