「俺、作戦が始まったらここを離れる」
ここまで来ればもうなんとなく予想はできていた。
スー、と細く息を吸って吐きながら天を仰ぐ。
「……ぬらりひょんのところに行くのか」
静かにそう尋ねると、少し驚いた顔をした泰紀がひとつ頷く。
「ああ。俺がどうこうできる相手じゃないのは分かってる。それでも俺がやらなきゃなんねぇんだ。慶賀のために」
親友の名前を挙げた泰紀は、込み上げる感情を押し殺すように強く拳を握りしめた。
亀世も、鶴吉も、瑞祥も泰紀も。みんなの気持ちは十分にわかる。仲間を失った痛みも、仇を討ちたい激情も、同じように味わって同じように抱いた。
けれどその激情に駆られたまま飛び出せば、今度は自分たちが聖仁や慶賀と同じ道を歩むことになるかもしれない。
敵は強い。手も足も出なかった。
今感情のまま飛び出せば、最前線にいる禄輪たちに迷惑をかけるだけだ。
今やらなければならないことは、復讐でもなんでもない。そうだ、自分の身を守ること、傷付いた仲間を癒すことだ。
気持ちが分かるからこそ、復讐を許す。それは間違いだった。
「泰紀。鶴吉さんも亀世さんも、瑞祥さんも。聞いてください」
名前を呼ばれた全員が振り返った。
「俺は────」
その瞬間、間を置かずに空砲が三発、森中に響き渡った。
空砲三発、それは"開戦"の合図だ。



