眉根を寄せて耳を近付ける。
「作戦が始まったら俺と嬉々は抜けるから、後のことは任せていい?」
「は!?」
思わずそう声をあげると、シッと薫が人差し指を立てた。
「こんなこと景福に言ったら殺されちゃうからさ、いい感じに誤魔化しといて」
「あんたそれでも教師ですか」
あはは、これでも教師。
薫はそう笑って目元でピースサインを作った。
「ごめんね、でも本隊に加わりたいんだ。俺と嬉々は、どうしても行かなくちゃいけないんだよ」
いつになく真剣な顔をした薫がジッと前を見つめる。その隣を歩いていた嬉々も同じ先を見ていた。
いつか、薫が自分たちに神々廻芽がどういう存在なのかを少しだけ語ってくれたことがあった。
『双子の兄貴で、学生時代のクラスメイト。そんで親友のひとりで、そんでライバルで、そんで、敵しかいないこの世界で唯一俺のことを心の底から愛してくれた人。俺が強くなるきっかけになった人────俺が、この世で一番殺したい人なんだ』
大切な人で、殺したい相手。
それだけでも薫や嬉々にどれほどの影響を与え、彼らの心に残っている人物なのかが分かる。
二人は、神々廻芽に会いに行くのだろう。
自分にそれを止める権限は、ない。
「……来光と嘉正のこと、絶対に連れ帰ってください」
ふっと薫が表情を崩して、叩くように恵衣の頭に手を置いた。
「当たり前でしょ。俺実は超強いから」
あんたが優秀なのは知ってますよ、なんて言えば調子に乗るので言わずに秘めた。
パンッと背中を叩いた薫は笑みを消して前に鋭い視線を向けながら、嬉々と何か話し込み始めた。



