「神ながら守り給い」
幸せだったことを思い出した。どれも皆で過ごした何気ない日常だった。バラバラになったはずなのに、すぐそこにみんながいるような気がした。
自然と口角が上がった。恐怖は感じない。
「幸え給え……ッ!」
次の瞬間、耳をつんざく轟音と共に、目の前が痛いほどに白く光った。
来ると思っていた衝撃はいくら待っても来なかった。恐る恐る目を開けると、鮮やかな紫と浅葱色の袴が目の前で揺れている。白衣に身を包んだ広い背中が、自分達を守るようにして前に立ちはだかる。
呆然とそれを見上げていると、突然背後から痛いくらいに抱きしめられた。
「待たせた」
いつも感情を表に出さず、人を小馬鹿にするような物言いしかできないクラスメイトの、今にも泣き出しそうな震えた声。
それがなんだか嬉しくて、零れたのは熱い涙だった。
「遅いよ恵衣……」
思わずそう零した。「悪い」と、恵衣が小さく謝る。
「バカ恵衣……僕らもう遺言残しちゃったんだけど……」
「そんだけ文句言えんなら自分で歩けるな」
そばにいると思っていた彼らは、本当にすぐそばに居たんだ。
逃げるぞ、そう言って脇に手を通した恵衣が二人を支えて歩き出す。神職たちが作ってくれた逃げ道を歩きながら、薫や禄輪と目が合った。
安心した顔をした禄輪は、「後でたっぷり説教だ」と三人に叫ぶ。
「今なら……説教でも拳骨でも、嬉しいかもしれない」
「はは……ドーカン」
今にも意識を飛ばしそうな虚ろな目をした来光が、どこか嬉しそうにそう呟く。思わず笑って頷いた。
どれもこれも生きているからこそ、味わえるものだ。



