言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー




誰かの腕の中にいる感覚がして、嘉正の沈んでいた意識が僅かに浮上する。

覚えている最後の記憶は、短剣が左目に振り下ろされる瞬間の激痛と恐怖だ。思い出した瞬間、激しい痛みと恐怖に叫びそうになって、けれど枯れ果てた喉は空気を僅かに吐き出しただけだった。

辛うじて開いた右目でうっすらと景色を確認する。世界が赤い。少しして、それが己の血によってそうなっているのだと気付いた。

何か音がするけれど、よく聞こえない。水中の中から聞いているかのようにこもった音が遠くに聞こえる気がする。

ぼやけた焦点が少しずつ合い始めて、親友が自分を抱きかかえているのに気付いた。


「らい、こう……?」


声が届いたのか、来光の瞳が激しく揺らいだ。しかし目線は合わない。仕切りに口を動かしているのが見える。

耳を済ませれば、息継ぎもなしに必死に略拝詞を繰り返し唱えているのが聞こえた。

空気が震える感覚が肌に伝わってくる。来光の肩越しに後ろを見た。卵色の半球が自分たちを囲んでいて、そこへ力がぶつかり弾け散るのが見えた。


来光の額からは玉の汗が滲んでいる。唇には血が滲んでおり、顔は青あざだらけで眼鏡も割れている酷い有様だった。

ふと、自分が片腕で抱き寄せられているのに気づいた。来光の右腕はだらりと垂れ下がっており衣服は元の色が分からないほど赤く滲んでいる。

間違いなく重症だ。