数メートル戻って、先程までいた部屋の前の雨戸が音の出処だと分かる。雨戸はガラス張りで、白いレースカーテンが引かれているので中庭になっている外の様子は見えない。
シャッ、と勢いよくカーテンを開ける。窓に変わった様子はなく首を捻った。
「別に変わったところは……ん? なんか上に挟まってる」
「上?」
「ほらそれ、上のレールんとこ。赤茶っぽい布?」
ガタガタと雨戸を揺らした泰紀は、布が噛んでいるのに気付くと隣の雨戸から外に出た。それに続いて中庭に降りる。
雨戸の鴨居に手を伸ばした泰紀は、挟まるその布を引っ張り出す。げ、と顔を強ばらせた。
おそらく屯所を隠す最後の結界、禊の滝で濡れたのだろう。あの滝は付与されている呪いを全て洗い流す。
「なんだこれ、ハンカチか?」
泰紀が布を広げた。確かに手のひらサイズの布切れでハンカチのようにも見える。赤茶色は主に布の真ん中辺りに広がっており、何かが滲んでそうなったようだ。
なぜか妙な胸騒ぎがした。
「泰紀、それ貸せ」
ほぼひったくるように布を奪い取る。シワだらけのその布を引っ張って光にかざした。
ふと、その布切れから微かに鉄っぽい匂いがした。汚れじゃない、これは誰かの血だ。
ぼやけた赤茶色の部分に目をこらす。
やがて見えた「光」という文字に、一瞬息が止まった。



