小さく吐いた息は熱っぽい。頬の涙を乱暴に拭って「それだけ言いに来た」と呟き、立ち上がろうとしたその時。
手首を掴まれた感覚がして、ハッと顔を上げた。振り返るよりも先に背中に重みを感じて、華奢な腕がうしろから亀世を抱きしめる。
「────んなわけないだろ」
久しぶりに聞いた親友の声に、わけがわからずただ泣きそうになった。
「確かに……あの場に自分がいたらって、何度も考えた。聖仁が殺されるその瞬間、他の皆は何してたんだろうって。なんで、聖仁だったんだって」
本人の口から聞いた本音は心を抉った。瑞祥がそう思うのは当たり前なのに、面と向かって言葉を受け止めるのはやはり苦しい。一番苦しんでいるのは瑞祥のはずなのに。
「でも……でもさ。同じくらい、亀世たちが無事で帰ってきてくれてよかったと思ってる。本当はもっと早く、"よく逃げてきた。無事でよかった"って、そう伝えたかったんだ。でも、ごめん。すぐに、素直に、伝えられなかった」
ずっと苦しかった。許されない罪を背負ったこと、親友ともう二度と前みたいには話せないかもしれないこと。
許されては行けないとわかっているのに、許して欲しいと、前みたいに隣に立ちたいと願うのは、やはり罪なんだろうか。
「だから……死んでもとか、自分が死ねばとか、もう二度と言うな」
回された腕にそっと触れる。その瞬間、堪えきれなかった思いが溢れた。ぼたりぼたりと回された腕に落ちて跡を作る。
「ごめんッ……ごめん。私は聖仁を助けられなかった!」
小さく首を振った瑞祥。首筋に柔らかい髪が当たる。それと同時に肩に暖かい雫が落ちてきた。



