もしもの数だけ聖仁が助かる道が増えて、もしもの数だけ後悔も増える。けれどそれは「もしも」の話であって、過ぎてしまった過去は変えられない。
きっと瑞祥だって思っていたはずだ。もしも私がそこにいれば、もしも亀世があの場で何かしら動いてくれていれば、もしも、もしも、もしも────。
見上げていたはずなのに、目元の雫は重力に負けて頬を流れる。
「ごめん……ごめん。私がもっと強ければ、私があの時動けていれば、私が臆病じゃなければ、私が瑞祥みたいに優秀だったら。あの場にいたのが瑞祥だったら、聖仁が死ぬことなんてなかった」
謝って許されることではない。謝ったからといって聖仁が帰ってくる訳でもない。謝罪はただ自分が楽になるだけの逃げ道だ。
私は楽になっていい人間なんかじゃない。
「これから私たちは、神々廻芽の潜伏先を奇襲する。聖仁を殺した烏天狗も、恐らくそこにいる。私は……もし死ぬことになるとしても、烏天狗を始末する」
ずっと決めていた。その時がきたら、何がなんでも自分が烏天狗を討つと。それが守られた私の、残された私の役割だから。
目を閉じれば脳裏にたくさんの思い出が蘇る。どれもこいつらとバカをして、腹を抱えて笑った日々だ。
その日々を崩したのは、間違いなく自分。だからそれが私なりの覚悟であり、ケジメだ。
「お前の大切な人を守れなくて、ごめん。あの時死ぬべきだったのは、私だったな」
部屋の中の人物はやはり最後まで何も答えなかった。



