「巫寿が行方不明の間、鬼脈と幽世を探し回った時に偶然見つけた廃神社の場所だ。黒狐族が頻繁に出入りしていて、野狐の伊也の姿も確認してる」
室内の空気が動揺と驚きで激しく揺らいだ。目を見開いた禄輪がそのメモを拾い上げる。
「確証はないけど、行ってみる価値は十分にあるだろ。その情報と引替えに、俺は巫寿の保護に向かう。異論ないよな。ていうか、あっても聞かねぇよ」
神職を押しのけて輪から抜け出すと、祝寿は扉の前でぴたりと足を止めた。振り向いた祝寿と間違いなく目が合った。
何故かとても不機嫌そうな、「納得がいかない」というような顔で頭のてっぺんからつま先まで舐めるように見られたあと、今度は鬼の形相で睨まれたかと思ったら、祝寿の口は「ありがとう」と僅かに動く。
自分が理由を問うよりも先に勢いよく襖が閉められた。
「恵衣お前、巫寿の兄さんに何かしたのか?」
隣に座っていた亀世に尋ねられ、首を捻る。心当たりは何ひとつも無い。
「恋敵とかち合った時みたいな顔してたぞ、祝寿さん」
「何ですかそれ」
眉根を寄せて聞き返せば、向かいに座っていた薫がブフォッと盛大に吹き出した。



