「ガキ二人の命なんかよりうちの巫寿の方が大事に決まってんだろ。動ける神職を総動員させて巫寿の保護に向かうッ」
「来光の札が効いている間は巫寿は安全だ」
「安全? いつ何が起こるか分からないこの状況でよくそんな戯言が言えるな! 安全だったら慶賀も聖仁も死んでねぇよ!」
嘉正たちを優先すべき理由も、祝寿の気持ちもよく分かるからこそ何も言えなかった。
「私情だって? ああそうだよ私情だよ。それの何が悪いんだよ! たった一人の妹だぞ、たった一人の家族だぞ! 巫寿は俺の生きる希望なんだよッ!」
前に巫寿から、両親は空亡に殺されており家族は兄の祝寿だけだという話は聞いている。過保護で鬱陶しいよ、と苦い顔で文句を言えるのは、間違いなく祝寿からの愛情を全身で感じ取っていたからだ。
それは祝寿も同じなのだろう。
皆が目を逸らして俯いた。この場にいる皆が、先の戦で大切な仲間や家族を失っている。私情だらけの叫びを、誰も咎めなかった。
深く長く息を吐き出した祝寿がゆっくりと項垂れた。沈黙が流れて皆が気まずそうに目配せをする。
「……って、俺がどれだけ喚いたところで、巫寿の為に人員を割くつもりはないんだろ」
禄輪が堪えるように目を瞑り「すまん」と声を低くした。
「今は一人でも多く人手が欲しい。攫われた来光たちの行方を追わねばならん」
わかってる、と祝寿が小さく答えたあと、唐突にジーンズのポケットに手を突っ込んで、取り出した一枚の紙切れをテーブルの上に滑らした。



