「違います」
え、と薫の瞳が揺らいだ。
「それは違います、絶対に」
────どんなに馬鹿なことをしたとしても、俺と幸の大切な息子たちだよ。
散々、朴念仁だ無神経だと言われ続けた自分にも、あの言葉に嘘偽りがないことは分かる。ただそれを他人の口から伝えるのは間違っている気がして、ただ強く否定した。
薫は戸惑うように視線を落としたあと「……そっか」と呟いた。
「話を戻そう。恵衣、途中で別れた巫寿には騰蛇が付いているんだな?」
禄輪に尋ねられ、ひとつ頷く。
「はい。白虎とも合流する予定で、来光の姿やつしの札があるので、あと三日は誰にもバレないはずです」
「なら、まずは嘉正たちの方だ」
神職たちの重いため息が重なる。
若い神職が手を挙げた。
最悪な状況になっている可能性もあるのでは、だとしたら巫寿さんの方を優先すべきでは?と、あくまで客観的に事実を確認する。
分かっていても腹が立った。ぎ、と奥歯を噛み締めると「落ち着け」と鶴吉に背中を叩かれた。
「それはないだろう。慶賀や聖仁の時のようにその場ですぐに殺さず連れ去ったのは、向こうには殺せない理由があるからだ。恐らく、巫寿たちが回収した払日揮毫筆の在処を聞き出そうとしているんじゃないか」



