「すみません、薫先生。でも、俺以外の皆が」
「うん、分かってる。だからここからは、俺らに任せな」
何度も自分たちではどうにもならない場面に直撃した。
自分の持てる最大限を出しても救えない命があって、勝てない敵がいて、乗り越えられない壁があった。
この人なら乗り越えられたんだろうか。この人なら慶賀を救えて、天司を倒せて、最後まで巫寿のそばにいてやれたんだろうか。
弱い自分が情けない。強くなりたい。何にも屈しない強さがほしい。任せろ、と言うだけで相手が安心できるような、この人みたいに。
「あれぇ? もしかして恵衣、泣いてる?」
頭の上からからかい口調が降ってきて、勢いよく腕を振り払った。
「泣いてません」
大股で廊下を進んでバレないように目尻を擦る。
前言撤回だ。この人みたいにはならない。俺はこの人を超えて、さらに強くなるんだ。大切なものを、最後まで守り抜くために。



