「全員、烏天狗に襲われてバラバラになった。逃げれた巫寿は、御覇李鈴を一人で取りに向かった。嘉正と来光は、烏天狗に捕まった。これからかむくらの神職と救出の算段を立てる」
泰紀の目が大きく見開かれた。
手が震えている。握りしめると指先は氷のように冷たい。
「慶賀は」
どくん、と心臓が大きく跳ねて呼吸の仕方を忘れる。咄嗟に目を逸らしてしまった。奥歯を噛み締める。手のひらの肉に爪がくい込んだ。
「慶賀は、隠れ家をぬらりひょんに奇襲されて……殺された」
怖いほどの沈黙が続いた。怒鳴り散らしてくれた方が楽だと思ったのは初めてだ。
分かった、なんの感情も籠っていない冷淡な声がそう答えた。は、と顔をあげると泰紀はもう既に背を向けて歩き出していた。
少し歩いたところで足を止めた。
「俺も救出作戦に参加する。でも、十分くれ。十分経ったら、戻るから」
語尾が震えていた。
初等部からだ。11年、こいつとはクラスメイトだった。だからこそ分かる。こいつと慶賀がどういう関係だったのか。
大切な人を失う痛みは、よく分かっているつもりだ。
泰紀の背中が見えなくなって、双子にバシンッと背中を叩かれた。
「よく頑張ったな」
「お前ら皆、ひとりで背負い込みすぎなんだよ」
不真面目で軽薄で、苦手な人たちだと思っていた双子のその手が今は何よりも心強い。
不覚にも熱くなった目頭を悟られないように顎を引いて俯いた。



