言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


転がるように階段をかけ降りる。

薫先生がもうすぐ来ると言っていたから、今は職員室か? いや、あの時"かむくらの神職"である豊楽先生がいたし、気絶する前に来光と嘉正が攫われたというのは伝えた。もう既にかむくらの神職まで話は伝わっているはずだ。となるとかむくらの屯所か?

とにかく薫先生に連絡を、と下足場で置き靴にしていたスニーカーに履き替えたその時。


「え……お前、恵衣か?」


突然声をかけられて弾けるように振り返る。


「ほんとだ、恵衣じゃん」

「やっと戻ったか不良少年」


学生服を身に付けた泰紀に、三年の先輩である亀世と鶴吉が揃って立っていた。

ばくん、と心臓が跳ねた。

『お前らは、もうちょっと、ゆっくりこいよ』

魂が肉体から離れ、冷たくなっていく慶賀の手のひらの感触が蘇る。


「なんで……」

「なんでって、お前に頼まれて本庁に侵入したのがバレたからその罰則喰らってんだよ。せっかくの春休みだってのに」


心臓がうるさい。今すぐこの場から逃げ出したかった。あいつのこと頼むな、と言われたのは紛れもない自分だった。


「お前こそ……なんでこんなとこいんだよ。他の皆はどうした?」


今にも弾けそうな感情を飲み込んで深く息を吸い込む。

冷静であれ、冷静で。それが神職だ。

神職とは危険はつきものな仕事、年に数回は両親と共に神職の神葬祭(そうぎ)にも参列するほど、死は身近にあった。

感情に左右されてはいけない。