言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー




巫寿と別れて工場前に戻る頃には、神職たちは中へ突入していた。急いで自分も中へ駆け込むと、話し声はするものの力がぶつかり合うような音はない。

胸騒ぎを無理やり沈めて階段を駆け上がる。二階にたどり着いた時には、5人の神職によって囲まれた土蜘蛛がちょうど祓除された瞬間だった。

廊下はガラス片が散乱しており、所々に血痕がある。一緒に逃げていた凛花とかいう女は神職のひとりに抱きかかえられていた。

必死に辺りを見回した。二人の姿はどこにもない。


「ちょ、君! 外で待ってろと言っただろう!」


神職のひとりが、自分を少年グループの一人だと思ったらしい険しい顔で走りよってきて、血だらけの己を見て目を見開く。


「そ、その怪我はどう、」

「男が二人いませんでしたか」


被せるようにそういえば「なんだって?」と神職が首をひねる。カッと頭に血が上った。


「男を二人見なかったかって聞いてんだよッ!」


思わず胸ぐらに掴みかかると、祓除が終わった神職たちがバタバタと駆け寄ってきた。「やめなさい!」と無理やり引き剥がされて、両腕を掴まれる。


「やめないか、いったい何を────君、恵衣くんか!?」


自分の右腕を掴んでいた神職が驚いたように声を上げた。ハッと振り向くと、緑がかった癖のある長めの髪に無精髭を蓄えた男が驚愕の表情で自分を見下ろしている。

見知った顔に不覚にも、目頭が熱くなった。


「今までどこにいたんだ!? (くゆる)先生がどれほど心配しているか……!」

豊楽(ほうらく)先生……!」


神修で「漢方薬学」の授業を教えている、来生豊楽先生だった。

先生の白衣の襟を縋る思いで掴んだ。



「今すぐかむくらの神職に連絡を、嘉正と来光が捕まったんです……ッ」