言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


恵衣くんが少し顔を顰めてポケットから紺色のハンカチを私の頬に押し当てる。一年の時の、観月祭の夜を思い出す。あの時は私がハンカチを差し出してあげた側だった。

受け取って、握りしめる。落ち着くその香りを胸いっぱいに吸い込む。

恵衣くんが私の両手を包み込んで、自分の額にそっと当てた。熱と、その奥で脈打つ血液を感じる。

言葉は必要なかった。それ以上に色んなものが、目一杯伝わってきた。


「どうか……気を付けて」


それ以上のことをいえば、泣き言を漏らしてしまいそうだった。恵衣くんがフッと鼻で笑ってゆっくりと頷いた。


ほぼ同時に背を向けた。振り返らずに違う道を走り出す。

来光くんと嘉正くんが繋いでくれた道、恵衣くんが託してくれた想い、それらが私の背中を押してくれている気がした。