乾いたような喉の痛みと、激しく脈打つ心臓に顔を顰めた。
神職によって管理され封印された空亡の肉片なら、こんなに焦ることはない。けれどもしあの部屋の奥に空亡の肉片があるのだとしたら、それは空亡戦で散ってからずっとそのままになっている手付かずの肉片だ。
あの夜、聖仁さんが殺された夜に烏天狗の天司がこう言っていた。
"空亡様の御体の一部が此地に在りと聞き参じた"。
つまり空亡の肉片をどうやって探せばいいのか、芽さん一派はもう知っているんだ。
空亡は元は辰巳陽太という少年で、肉片を探すには陽太くんの名前を使えばいい。そして、肉片のそばには必ず陽太くんの姿をした霊が浮遊している。
それらを全て知っていて、確実に見つけに来ている。
ということは、もしかしたら、もう既にこの場所は────。
カシャンッ、と金属同士が擦れる冷たい音が廊下に響くいた。
息が詰まった。その音を忘れるわけがない。聖仁さんを亡くしたあの日から、あの夜の夢を何度も見た。そして何度も何度も夢の中で無情に鳴り響いた音だった。
叩き付けるような突風が勢いよく窓ガラスを割った。咄嗟に頭を庇った腕に破片が飛び散り赤い線を描く。
息付く間もなく唸りをあげる激しい風が割れた窓ガラスから中に吹き込む。細かいガラス片が舞い上がり目を開けることができない。
その時だった。憑き物を祓う時のようにバシンと背中の中心を勢いよく叩かれた。驚いて背中に手を当てると、紙のような何かが人差し指に触れた。



