「ヤバい状況ってのは分かるよね? 手放すけど、絶対に声を上げないで。いい?」
女の子が何度もこくこくと頷いたのを確認し、恵衣くんはゆっくりと手を引いた。
「君、凛花ちゃん?」
「そ、そう……! ねぇ助けて、私化け物に襲われッ」
恵衣くんに睨まれて凛花ちゃんは口を閉じた。シッ、と人差し指を唇に当てた嘉正くんに「ごめん」と咄嗟に謝る。
「分かってる。俺らは君を保護しに来た」
「ほかの皆は……?」
「大丈夫、安全な場所で君のこと待ってる。凛花ちゃんはひとまず、ここから外に出ることが最優先だ。いいね?」
泣きそうな顔で頷いた凛花ちゃん。
出てこられる?と手を差し出した嘉正くん。立ち上がろうとしたけれど、どうやら恐怖で腰が抜けたらしくストンとロッカーに座り込む。
「恵衣、そっち引っ張って」
「なんで俺が」
「いいから早く」
顔を顰めた恵衣くんが手首を掴んで脇に手を差し込んだ。せーの、で引き上げられた凛花ちゃんは、今度はバランスが取れなかったのか「ヒッ」と息を飲んで前のめりになる。
悲鳴を上げなかったのは偉かった。ただ、丁度前に立っていた恵衣くんが犠牲になった。
ドン、と鈍い音がして二人して床に倒れ込む。口は悪いけれども根は優しいので、咄嗟の判断で凛花ちゃんの下敷きになったようだ。「うっ……」と苦しそうに息を詰まらせる。



