血の跡を追って辿り着いたのは、女子更衣室の最奥にあった縦長のロッカーだった。人が一人隠れるには十分な大きさがある。
開けるぞ、と恵衣くんが目配せをする。私たちはひとつ頷いてその背中を見守った。
ギィィ、と蝶番が擦れる音が響く。
そして女の子はそこに居た。
腰まである金髪の毛先をくるりと巻いて、メイクは泣いて崩れたのだろうけれどモデルのようにくっきりとした赤リップ。顔つきはまだ幼いので、おそらく同い年か年下だろう。
この子も土蜘蛛に襲われたようで血が滲む太ももを手で押えながら、ロッカーの壁にこてんと首を預けて目を瞑っている。おそらく恐怖で気を失ったのだろう。
恵衣くんが声を潜めて「おい」と女の子の肩を揺らした。
以前も似たような状況があったけれど、その時は容赦なくほっぺを引っぱたいていた。さすがに女の子が相手の時は恵衣くんも慎むらしい。
数度揺すられて、女の子の瞼が僅かに震えた。
そしてゆっくりと目が開きぼんやりと私たちを見たあと、カッと目を見開いた。ひ、と小さく息を吸った瞬間、すかさず恵衣くんがその子の口を塞いだ。
悲鳴は恵衣くんの手のひらに吸収されていく。
「騒ぐな馬鹿。死にたいのか」
まるで敵側みたいな物言いに思わずみんなでずっこける。成長したと感心したばかりなのに。
「ちょ、恵衣。相手女の子だから、しかも一般人」
嘉正くんが二人の間に割って入った。



