「あの馬鹿共の話では、2階の廊下ではぐれたらしい。逃げ遅れてどこかに隠れているか、土蜘蛛に捕まって巣に連れていかれた可能性が高い」
巣に連れて行かれた可能性。
思わずその先を想像して両腕を抱きしめる。
「すでに土蜘蛛に食べられた……ってことはないよね?」
「ないな。そもそも蜘蛛は数週間食べなくても生きていける生き物だ。捕らえた餌は糸で巻いて保存しておく習性がある」
ホッとすると同時に、つまり捕まったら最悪何日も生きたまま食べられるのを待つしかないということだ。
どれ程の恐怖か、計り知れない。
一刻も早く見つけてあげないと。
事務所、と書かれたプレートがすきま風でキコキコと揺れる扉の前に来た。割れた磨りガラスから中を覗き込んだ嘉正くんが「うん、大丈夫」と振り返る。
「俺が廊下見張るから、三人で中を捜索して」
深く頷いた私たちは、足音を忍ばせて事務所の中に流れ込んだ。



