2階のフロアにたどり着いた。土蜘蛛の足音は聞こえない。
死角からざっと確認したところ、廊下に面した扉が四つ見えた。おそらく一階が作業場で、二階は事務室になっていたのだろう。
「土蜘蛛のやつ、どこか部屋に入ったんじゃないの。開けたら飛び出てくるとかホントに勘弁してよ……」
情けない顔でスマホのライトを落とした来光くん。
私たちも灯りを消した。同じフロアにいるのなら、少しでもこちらの位置を知らせる刺激は消すべきだ。
「いや、音が全く聞こえないから、廊下の反対側にある階段から一階か屋上に上がった可能性が高いと思う。探すなら今のうちだよ」
その言葉にホッと胸をなでおろす。
来光くんの言う通り、扉を開けた瞬間あの巨大な蜘蛛が飛び出してきたら、間違いなく失神すると思う。とりわけ私は昆虫の類が大の苦手なので、最悪心臓が止まる。
「扉を開けた瞬間に土蜘蛛が飛び出してきませんように……」
胸の前で小さくパンパンッと手を鳴らした来光くんの後頭部を、すかさず恵衣くんがスパンッと叩く。
「そんなしょうもないことに言霊を使うな!」
「うるさい! 死活問題なんだよ虫嫌いには!」
小声でまた言い争いを始めた二人に、胸の前で合わせていた手をこっそりと下ろす。
名案だと思ったのに。
いいから行くよ、と苦笑いを浮かべた嘉正くんが言い争う二人の背中を諌めるように軽く叩いて歩き出した。



