「……妙だな」
ぼそりと呟いた恵衣くんが階段の上をじっと睨んだ。
「何が妙なの?」
「普通あの程度の土蜘蛛一体で、この残穢の量にはならないはずだ」
確かに牛鬼も同じくらいの大きさだったけれど、濃霧が立ち込めるようなこんなに濃い残穢ではなかった。
もう一体いるのか?という呟きに皆が震え上がる。
あんなのがもう一体だなんて勘弁して欲しい。
ひぇ、と額の汗を拭った来光くん。
「とにかくさっさと女の子を見つけて撤退しよう。土蜘蛛に見つかるのもまずいけど、応援に来た神職に見つかるのもまずい」
「ああ、行くぞ」
身を低くしたまま階段をのぼり始めた恵衣くんと来光くんの背中に、ふっと懐かしさが湧き出る。前もこうして階段を登ったことがあった、一年の神社実習で深夜の学校に潜入した時だ。
あの時はいがみ合っていた2人も、こうして肩を並べるようになったのか。
この旅が始まってからずっと、ふとした瞬間にこれまでのことを思い出す時が何度もある。辛く苦しかったこともだ。
その経験が今に繋がって、自分たちを守ってくれているような気がした。



