言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


「それにしても土蜘蛛か、厄介な相手だね」


厳しい顔で階段の上を見上げた嘉正くんに、「だね」と同調した。

名前の通り巨大な蜘蛛の姿をした妖で、基本的には森や山奥に住んでいる。けれどたまにこうして人里へ降りてきて人間を惑わしたり危害を加えることもあって、神役諸法度では見つけ次第祓除することを推奨されている。

蜘蛛といえば、1年の夏に牛鬼(ぎゅうき)を倒したことがあった。

頭が牛で身体が蜘蛛の、こちらも祓除が推奨されている非常に危険な妖だ。あれはお兄ちゃんがまだ入院していた頃で、病院の旧病棟で牛鬼に出くわし皆で必死に戦った。


手すりの陰から階上の様子を確認した恵衣くんが、人差し指をくいと曲げて進む。身をかがめて慎重に階段を登っていく。


「土蜘蛛って、確か火だっけ」

「うん。正確に言えば、平家物語の中で源頼光が名刀・膝丸(ひざまる)で一刀両断したって伝承から、土蜘蛛退治は火で弱らせたあと胴体を切るのが一番効果的だって言われてる」


すかさず秀才嘉正くんが詳しい解説付きで答えた。流石だ。

先頭を歩いていた恵衣くんが怖い顔で振り向いた。


「祓除はしないって言ってんだろ。あくまで保護が最優先だからな」

「分かってるよ。知識を確認しただけじゃん」


たく、と来光くんが唇を尖らせる。


「知識がちゃんと頭に入っているなら、第三者への確認は不要なはずだがな」


ふん、と鼻を鳴らして独り言を呟く。