震えて泣いていた女の子のひとりが叫んだ。
凛花?と皆が眉根を寄せる。
「逃げ出す時にはぐれちゃったの、凛花だけまだ出てきてない……!」
皆の顔に緊張が走った。勢いよく振り向いて、金属が擦れる音をたてて軋む工場を見上げる。
あの中に────女の子と土蜘蛛が取り残されている。
「恵衣、悩んでる暇はない。行こう」
眉間に皺を寄せて工場を見上げる恵衣くんの背中を叩いたのは嘉正くんだった。
「本庁には通報したけど、神職が来るまであと20分はかかるらしい。女の子だけでも保護すべきだ」
来光くんがその隣に並んだ。私もみんなの傍にかけよる。若干不安の色を見せる恵衣と目が合う。
何も言わずにひとつ頷いた。恵衣くんが一際長い溜め息をこぼした。
「……あくまで保護が最優先だからな、先走るなよ」
分かってるよ、とみんながその背中を追い越して走り出す。私も、と続こうとしたところで恵衣に腕を掴まれた。
掴まれたところがたちまち熱くなって、心臓が跳ねる。
「離れるな」
「う、うん」
ぎこちない返事を不審に思ったようだけれど、すぐさま二人に続いて走り出す。
私はというと、まだ何も始まっていないのにバクバクと煩い心臓を服の上から押さえ付けた。



