ダンッ、と強く机を叩いた恵衣くんが無言で立ち上がり部屋から出て行った。恵衣!と来光くんが慌てて呼び止めたけれども、応えることはなかった。
「大丈夫、私が行く。皆はここを発つ準備をしておいて。眞奉は恣冀からなるべく具体的に、審神者の居場所を聞き出しておいて」
こういう時に限ってやけに頭が冴え渡っている。
きっと冷静でいられたのは、私以上に感情を顕にしてくれた人がいたからだ。
皆が不安げな顔ながらも頷いてくれたのを確認して、部屋を飛び出した。
遠ざかっていく背中を必死に追いかける。
「恵衣くん待って! 恵衣くん!」
何度呼びかけてもその背中は遠ざかって行くばかりだ。玄関を降りて外に出た恵衣くんは、それでもなお振り返らずに歩き続ける。
雪駄をつっかけて、追いつこうと速度をあげたその時、玄関扉の敷居に足を取られた。すんでのところで手は間に合ったけれど、派手にズシャッとすっ転ぶ。
あまりの痛さに立ち上がることができず蹲っていると、遠ざかったと思っていた足音が目の前まで戻ってきた。
ゆっくり顔をあげる。
顔を顰めた恵衣くんと目が合って、すっと右手を差し出された。
「ありがとう……」
手を借りて立ち上がる。すぐに離れていくかと思っていた右手は、まだ私の手を握ったままだ。
怖い顔のまま無言でじっと見つめられる。気まずさに手を引こうとすれば、より一層強い力で掴まれた。
「恵衣くん。その、手、痛いから離し────」
「お前といると」
言葉が重なった。



