志ようさんは恐らく、あの祝詞を奏上した。奏上した結果、全ての残穢を自分の体の中に取り込み、残穢を封じ込めた体は呪物と化したのだろう。そして莫大な残穢は十数年たった今でも浄化が終わらず、肉体は恣冀によって守られている。
空亡戦で唯一空亡に重傷を負わせた祝詞。
その祝詞なら勝ち目があるかもしれないとわかった上で、それでも恵衣くんは「絶対に駄目だ」と言ってくれたわけだ。
やっぱり恵衣くんは、優しい人だな。
自然と零れたのは、笑みだった。
「審神者が最後に奏上したのは────"天地一切清浄祓"なんだね」
私から気まずそうに目をそらす。肩を掴む手に力が入った。そっと自分の手を重ねる。震えている。こんなにも強くて優しい人が。
「頼むから、それだけは奏上しないって、口に出して約束してくれ……」
その願いに、その優しさに、すぐに応えることはできなかった。
そっとその胸を押し返す。今にも泣き出しそうな瞳が、訴えかけるように私を見ている。逃げるように目を逸らした。
「御覇李鈴を探しに行こう」



