言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー




「────貴方の望むまま、思うがままに、自由に生きて」



恣冀(しき)の顔がくしゃりと歪んだ。ギッと噛み締められた奥歯が音を立てる。キツく握られた拳が太ももを強く打ち付ける。


「俺は……ッ、(あるじ)を守り、君に仕えるために顕現したんだ! 君のそばを離れてまで、自由に生きたいとは思わないッ……」


鼓膜を震わせるその叫びは慟哭のようだった。

最後に使役された十二神使の白虎、恐らく共にすごした時間はほんの僅かなものだったのだろう。けれど恣冀(しき)にとってその日々は、志ようさんと絆を築くには十分すぎる時間だった。


「最後まで、君の全てを守りたかった。でも君は俺にそれを許さなかった。俺はただ、君に笑っていてほしかった。ただ、それだけなのに」


守りたい、笑っていてほしい。

私はその気持ちを知っている。

それは脆く、尊く、力をくれるもの。

そして志ようさんのそばに居たからこそ、彼女の心の奥に隠された寂しさに気付いていたはずだ。与えられた宿命の重圧に押しつぶされそうになる背中を見ていたはずだ。

けれど志ようさんはそこから逃げ出さなかった。甘えることも頼ることも、守らせることも許さなかった。

その気持ちすら許されない痛みは、計り知れない。



「どうか、君を救ってくれ」



2年前、恣冀が初めて私の前に現れたあの時から、彼はずっとこのことを伝えたかったんだろう。