「あなたは、恣冀だよね? 十二神使の白虎の」
ゆっくりと語りかける。
恣冀は何も答えず、またぼんやりと宙を見つめた。恣冀の身体が陽炎のように揺らいだ。
そうだ、これは恣冀の本体ではなく魂魄、またいつ消えてしまうか分からない状態なんだ。
「あなたは今どこにいるの? 先代の審神者から何を聞いたの? 審神者は最後に何の祝詞を奏上したの?」
恣冀の肩がぴくりと震えた。悲しみに染まっていた瞳には強い怒りの色が滲み出す。思わず息が止まった。
「────これ以上、君を傷つけることは、俺が許さん」
初めて恣冀が口を開いた。まるで木管楽器のように深みのある低い声だった。
そして、その言葉は疑念を確信に変えていく。
これ以上傷つけることは、恣冀は確かにそう言った。まるで志ようさんが今もすぐそばに居て、それを守っているような口振りだ。
「審神者は、生きているの……?」
私の言葉を聞いた途端、恣冀の瞳にフッと影がさした。
「あんな姿、生きているとは言えない」
志ようさんが「これは変えられない」と言った先見の明で見た未来と今がズレている時点で、妙だと思っていた。空亡を滅ぼすには私か志ようさんのどちらかが死ぬ必要がある。でも志ようさんは亡くなっていて、空亡はまだ生きている。
全身が震えた。
生きているとは言えない、つまり酷い状態ではあるけれど生きている。志ようさんはやっぱり亡くなっていなかったんだ。



