言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


ばくん、と大きく心臓がはねた。


同時に、また初めてあった時と同じように形容しがたい複雑な感情が胸の中を渦巻く。

謝りたかった、会いたかった、申し訳ない、顔を見せて。

それは間違いなく、運命を分けることになった志ようさんの感情だ。



「────恣冀(しき)



静かに、でも確かに。そっとその名前を口にすると、ぶるりと全身が震えて打たれたように胸に響いた。

ずっと考えていた。志ようさんが彼につけた恣冀(しき)という名前にはどんな意味があるのだろうと。

()、思うがままに。()、強く望む。

思うがままに強く望む未来を。望む未来を、自由に生きて欲しい。

きっとそんな意味があるんじゃないかと思っていた。

志ようさんは彼が、この世界で自由に生きることを望んでいた。


恣冀(しき)の瞼が僅かに震えて、琥珀色の瞳がぼんやりと宙を見上げた。何かを探すように瞳が動いたあと、ゆっくりと私の姿を映す。


だとしたらどうして。どうして彼はこんなにも。


琥珀色の瞳から大粒の雫が一滴こぼれ落ちた。


こんなにも悲しい顔をしているのだろうか。