深い山の奥、鎮守の森からひょっこりと顔を出す荘厳な建物が本殿だ。
石段は何百年も踏みしめられて角が丸くなり、苔の緑が静かに年月を語っていた。
鳥居をくぐると、空気がひとつ奥へ沈む。湿った土と古びた木の甘い匂い。風邪で木々が揺れる音がうるさく、杉の高木が天を閉ざすように並んでいる。
白砂の庭が広がり、中央に黒く重厚な拝殿。屋根は銅板が酸化して深い青銅色に変わり、軒先には太い注連縄が張られている。紙垂は風もないのに微かに揺れ、境内のどこかで鈴の音が鳴った。
ここが人の時間とは別の場所であることを思い出させる。
いつもここに来るとなぜか冷や汗が滲む。とてつもなく強大な何かにジッと見つめられているような緊張感と焦燥に、胸がばくばくと騒いだ。
振り返ってクラスメイトたちを見る。みんな緊張した面持ちで、恐る恐る辺りを見回していた。
「見た目で言えばわくたかむの社のほうが立派なのに、なんだろうね。抗えない強大な何かがそこに存在してるって感じる」
嘉正くんのつぶやきに他のふたりも重々しく頷いた。
言い表すとするならば、これは間違いなく畏怖だ。
「巫寿はここで、白虎を見たんだな?」
「うん。でもあれは多分、白虎の本体ではなかった」
15歳の冬に見た、かむくらの社の鎮守の森を彷徨う白い影。審神者が最後に使役した十二神使。
追いかけようとしてまるで空気に溶け込むようにスッと消えていった。



