かむくらの社所在を正確に表現できる人はいない。
何百もの結界の奥に隠されており、その結界を正しい順番で通り抜けることが、かむくらの社へたどり着ける唯一の方法だからだ。
私もまだ片手で数えられる程度しか訪れたことはないのだけれど、以前訪れた際に禄輪さんが「こんな覚え方があるぞ」とアルプス一万尺のメロディーに乗せて、道順を面白おかしく覚える方法を教えてくれた。
若かりし頃に私の両親と一緒に作った歌らしい。
その時、絶対に思わず口ずさむようなことはないようにしようと心に誓ったのだ。
37個目の鳥居をくぐると、どこかの裏路地に出た。当たりは薄暗く腐った水とカビの匂いが充満し、室外機が動く音が響いていた。
「今度は裏路地か、ほんと興味深い結界だね」
土埃で汚れた塀のてっぺんを走り抜けていく猫に目を細めた嘉正くん。
「よく道順を覚えられたね、巫寿ちゃん」
「あー……うん。ちょっとね」
曖昧にはぐらかしながら数回路地を曲がるとまた朱色の鳥居が見えてくる。
迷わず鳥居をくぐり抜けた。
進みながら、初めてかむくらの社へ訪れた日のことを思い出す。
魑魅に襲われ家を荒らされ、気を失った私を禄輪さんがかむくらの社まで運び出してくれた。
その時はそんな重要な場所だったなんて知らなくて、あとから本当にびっくりした。
そこで出会ったのが、絹糸のような白髪に琥珀色の瞳を持つ妖、十二神使の白虎────恣冀。



