「行くしか……ないのか? いやでもかむくらの社は本庁の上層部と宮司しか……いやでもこの状況なら……」
難しい顔でブツブツと呟く恵衣くん。
それもそうだ。かむくらの社は禁足地。本庁の上層部ですら一年に一度、社の宮司は一生に一度、普通の神職なら一度も訪れることはない場所だ。
行けば間違いなく手がかりがあるはず、けれど規則は規則。その狭間に立たされて悩んでいるのだろう。
「規則なんて守ってる場合じゃないでしょ」
「行くしかなくない?」
どちらかといえば「行ってみたい」という感情が全面に出ている二人の言葉に、ぎゅっと目を瞑り眉間を抑えた恵衣くんは、風船がふくらませそうなほど長く深い溜息をついた。
「……かむくらの社へ立ち入ったことは他言無用だ。それと、日没までには社を発つ」
「日没? なんで?」
「かむくらの社は日暮れ以降、男子禁制。男は立ち入ってはならない決まりなんだよ」
へぇ〜、と頷き数秒考えたあと「えっ」と声を上げた。
なんでお前が驚くんだよ、と恵衣くんが疑いの目を向けてきて慌てて首を振った。
日暮れ以降は男子禁制って、普通に連日お泊まりしていた禄輪さんは完全にアウトなのでは……?
やっぱり泊まったことは誰にも言わない方が良さそうだ。
「そうと決まればすぐに出よう」
「だね。出る前に慶賀に手を合わせてから行こう」
「ああ」と皆が大きく頷き、弾みをつけて立ち上がった。



