言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


宿に戻ってくると、「ごめん、今日は休む」と嘉正くんが振り返ることなく寝室へ歩いて行った。「僕ももう少し外の空気吸いたい」と来光くんは来た道をもどっていく。ばらばらに歩き出した二人の背中に、胸元をぎゅっと握って俯いた。


「今日は休むぞ。お前は外に出るなよ」


雪駄の土を落としながら恵衣くんが顔をあげる。私が頷いたのを確認すると「これ返してくる」とバケツに入ったスコップを持ち上げた。

恵衣くんの背中も見えなくなって、私もやっと雪駄を脱いだ。


二日前からこの宿屋で世話になっている。入口の鳥居がかけられている宿屋は本庁と連携しており、神職ならほぼタダも同然の金額で宿泊することができる。

慶賀くんの骸を背負って途方に来れながら歩いていた時に偶然見つけた。

本庁と連携している別の宿屋に一度みんなで泊まったことがある。異文化交流学習中に薫先生に無理やり任務に引っ張り出され、帰りが遅くなった時に利用した。

もしかしたら薫先生は、いつかこうなることを見越して私たちに教えてくれたんじゃないだろうか。


部屋に戻るとテーブルに突っ伏した。額に冷たい面が当たって心地よい。

考えなければならないことは山ほどあるけれど、慶賀くんを埋葬すること以外の話し合いは何も出来ていない。



これから、私たちはどうすればいいんだろう。

慶賀くんの死を絶対に無駄にはしない、みんなその気持ちはある。ただこのまま進み続けるべきなのか、という疑問も同時にあった。