言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


「連れて帰ってやれなくて、ごめん。髪だけでも絶対に、家まで連れて帰ってやるから」


嘉正くんが首から下げた小さな巾着を握りしめた。ここへ来る前に、宿で少しだけ髪を切ってその中に入れた。

自分たちの勝手な都合で、家まで連れて帰ることができないせめてもの罪滅ぼしに、そうしようと提案したのが嘉正くんだった。

今誰かに連絡を取れば、自分たちの居場所がバレてしまう。バレれば間違いなく連れ戻されて、仲間を失ってまでここまで進んできたこと全てが無駄になってしまうからだ。


「……似合ってるな、浅葱袴」


めくれた浅葱色の袴の裾を直しながら恵衣くんがそうこぼす。

慶賀くんの制服は血で酷く汚れてしまったので、恵衣くんが自分の袴を提供してくれた。まだ階級が直階四級の慶賀くんは白い袴しか認められておらず、三級に合格した恵衣くんと嘉正くんの袴を見て「いいなぁ」と羨ましそうに見ていた。

空のように綺麗な浅葱色は、明るい性格の慶賀くんによく似合っている。


最後に全員で帰幽報告の祝詞を奏上して土を戻した。

けれども私たちの心には、もう二度と埋まらない大きな穴があいた。