冷たい風がプラタナスの梢を揺らして、葉っぱが音を立てて飛び散っていく。ここは校門前、ちらほらと周りに他の生徒の姿が見えて、正直その視線が痛いというか恥ずかしい。

「ちょっと、二人とも! みんな見てる! め、目立ってるから離してって!」

 僕の手首は親友の敦也(あつや)にがっしり掴まれ、背中からは後輩の律月(りつき)の長い腕が僕の胸と腰に回ってきつめにハグされてる。
 僕は今、不本意ながら、言わば校内随一のイケメン二人から力づくで奪い合われているようなとんでもない見た目になってる。

「離せって」
「「嫌だ」」

 もう1回喚いたけど、どっちも放してくれないどころか、さらに強く僕にそれぞれの屈強な腕が絡みついてきた。
 敦也は「建国顔」とか女子に言われてたきりっと男らしい表情をして、真正面から僕を見つめて言い放ってきた。

歩陸(あゆむ)、もう限界だ。戻ってきてくれ。お前がいないと毎日つまらない。癒しがない!」
「敦也、なにいって……」
「お願いだ」
「敦也……」

 親友のお願い顔は流石に無下にできない。身体が前に出かけたところをぐっと後ろに引き戻された。

「アユ先輩のこと、こんだけ放って置いてさ。もうあんたの出る幕じゃないし。こんな面白くて可愛い人、簡単に手放しちゃダメだろ」
「ええ? 律月、なにいってんの?」
「それに。この人、もう俺のだし」

 後ろで後輩の律月がイケボでせせら笑いながら、僕の事を抱きかかえるぐらいの強さでほとんど足が浮くぐらいの強さで抱き抱えられた。。

「俺は、歩陸を手放したつもりなんてない」
「はあ? あんな寂しい思いさせて何言ってんの? このもう、俺のそばにいさせるんで、あんたはすっこんでて?」
「歩陸、お前の気持ちはどうなんだ?」
「え……。僕は……」

 中学からの親友と、すごく仲良くなった後輩と。どっちか一人なんて……、今ここで選べっていうの? 

 ただ僕は、お昼をのんびりと暖かいところで食べたかっただけなのに!
 
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