「え……」
淡々とした平静な口調で放たれた言葉に、心臓がヒュンと一瞬でちぢこまった。
「そ、そんな、せっかくブースがあるのに」
「そうは言っても、祖母も亡くなりましたし。使う人間がいませんから」
彼はカップにコーヒーを注ぎながら淡々と言うと、客席へ運んで行った。
「ニャニャニャー!」
ザラメが何か言いたげに鳴き始めたので、イヤホンを片方だけつける。
『アンバーはそういうヤツにゃ!!』
〝アンバー〟は彼の名前だろうか。
『冷たくて嫌なヤツ!』
「優しそうな人だけど」
口をつけたミルクティーも上品で優しい味がする。メアリーがいた頃と変わらないようだ。
『メアリーと違って俺たちの言葉だってわからない、冷たいできそこないニャ』
「メアリーにはあなたたちの言葉がわかったの? イヤホン無しで?」
『当たり前ニャ! メアリーは優秀な魔法使いだったんだからニャ。ツナのラジカセにだってメアリーの魔法がかかってるニャ』
「魔法……」
なんだかもう、魔法という言葉くらいでは驚きも少ない。それにメアリーは、魔女と言われたら納得してしまうような神秘的な老婦人だった。
『なのにアンバーのヤツは……』
「今日はザラメがよく鳴きますね」
カウンターに戻ってきたアンバーさんの声にドキリとする。
「まるであなたと話しているみたいだ」
「え!? あはは」
鋭い指摘に、ごまかすような苦笑いを浮かべる。
「祖母ともよく会話するみたいに鳴いていましたよ」
『みたいじゃなくて会話してたニャ! できそこないのお前と違って』
聞こえていないとはいえ、こちらがハラハラしてしまう。
「あ、アンバーさんは、ザラメとお喋りしないんですか?」
「あれ? 私、名乗りましたっけ?」
『ツナは本当にドジにゃ』
ザラメは全方位に毒舌だ。ムカつく。
「え、えーっと。め、メアリーに聞いたことがあるんです! アンバーさんっていう孫がいるって」
「そうでしたか」
アンバーさんはニッコリと微笑んでくれた。
「ザラメは祖母とずっと一緒に暮らしてきた猫ですから。私にはどうも心を開いてくれなくて」
『メアリーの血を引いてるくせに猫の言葉がわからないヤツとなんて、話すことないニャ! バカアンバー』
「ちょっと!」
ヒソヒソ声でザラメを静止するように囁いても、ツンとした表情でお構いなしという空気。ため息が漏れる。
「ラジオ……もったいないと思います」
「しかしあのブースを使いたいという申し出も今のところありませんから」
アンバーさんに猫の言葉が通じないのがもどかしい。
「アンバーさんご自身がラジオをやってみる……とか」
「私がですか?」
「はい。とっても心地良い声をされてますし」
聞いていると心も落ち着いてくるような、まるで昔から知っているみたいな声だ。素人の意見だけれど、DJに向いていると思う。
「それはいい考えかもしれませんが、人手が足りていないので。あそこまですべて客席にしてしまう方が店のためかと」
「そうですか……」
メアリーの顔が浮かんで、しょんぼりと肩を落とす。
淡々とした平静な口調で放たれた言葉に、心臓がヒュンと一瞬でちぢこまった。
「そ、そんな、せっかくブースがあるのに」
「そうは言っても、祖母も亡くなりましたし。使う人間がいませんから」
彼はカップにコーヒーを注ぎながら淡々と言うと、客席へ運んで行った。
「ニャニャニャー!」
ザラメが何か言いたげに鳴き始めたので、イヤホンを片方だけつける。
『アンバーはそういうヤツにゃ!!』
〝アンバー〟は彼の名前だろうか。
『冷たくて嫌なヤツ!』
「優しそうな人だけど」
口をつけたミルクティーも上品で優しい味がする。メアリーがいた頃と変わらないようだ。
『メアリーと違って俺たちの言葉だってわからない、冷たいできそこないニャ』
「メアリーにはあなたたちの言葉がわかったの? イヤホン無しで?」
『当たり前ニャ! メアリーは優秀な魔法使いだったんだからニャ。ツナのラジカセにだってメアリーの魔法がかかってるニャ』
「魔法……」
なんだかもう、魔法という言葉くらいでは驚きも少ない。それにメアリーは、魔女と言われたら納得してしまうような神秘的な老婦人だった。
『なのにアンバーのヤツは……』
「今日はザラメがよく鳴きますね」
カウンターに戻ってきたアンバーさんの声にドキリとする。
「まるであなたと話しているみたいだ」
「え!? あはは」
鋭い指摘に、ごまかすような苦笑いを浮かべる。
「祖母ともよく会話するみたいに鳴いていましたよ」
『みたいじゃなくて会話してたニャ! できそこないのお前と違って』
聞こえていないとはいえ、こちらがハラハラしてしまう。
「あ、アンバーさんは、ザラメとお喋りしないんですか?」
「あれ? 私、名乗りましたっけ?」
『ツナは本当にドジにゃ』
ザラメは全方位に毒舌だ。ムカつく。
「え、えーっと。め、メアリーに聞いたことがあるんです! アンバーさんっていう孫がいるって」
「そうでしたか」
アンバーさんはニッコリと微笑んでくれた。
「ザラメは祖母とずっと一緒に暮らしてきた猫ですから。私にはどうも心を開いてくれなくて」
『メアリーの血を引いてるくせに猫の言葉がわからないヤツとなんて、話すことないニャ! バカアンバー』
「ちょっと!」
ヒソヒソ声でザラメを静止するように囁いても、ツンとした表情でお構いなしという空気。ため息が漏れる。
「ラジオ……もったいないと思います」
「しかしあのブースを使いたいという申し出も今のところありませんから」
アンバーさんに猫の言葉が通じないのがもどかしい。
「アンバーさんご自身がラジオをやってみる……とか」
「私がですか?」
「はい。とっても心地良い声をされてますし」
聞いていると心も落ち着いてくるような、まるで昔から知っているみたいな声だ。素人の意見だけれど、DJに向いていると思う。
「それはいい考えかもしれませんが、人手が足りていないので。あそこまですべて客席にしてしまう方が店のためかと」
「そうですか……」
メアリーの顔が浮かんで、しょんぼりと肩を落とす。



