メアリーというのは、この店のオーナーだった老婦人だ。イギリスの血を引いていると言うだけあって、髪はきれいな銀髪で瞳はグリーンがかっていて吸い込まれてしまいそうだった。
そして彼女こそが、ここでコミュニティFMの番組を放送していた人物だったのだ。
だけど、高齢だった彼女は今年の初めに亡くなってしまった。胸がキュ……と小さく軋む。
『なんでメアリーがお前にラジオをやるのニャ!』
ひときわ訝しんだような口調で問い詰められた。
「なんでって……。私、大学でラジオ同好会に入っているの。それで会誌に載せる記事でメアリーにインタビューをさせてもらって」
――『あなた本当にラジオが好きなのね、嬉しいわ。これ、良かったら使ってくれないかしら』
彼女はもう使わないからと、このラジカセをくれた。
「録音もできて便利だから、ラジオ好きな若者の役に立てて欲しいって」
実際カセットテープでインタビューの録音なんかもしていて、アナログ感が楽しいし案外重宝している。
「そうか……」
私の答えにザラメはポツリとつぶやいて、考え込むように黙ってしまった。
『……それなら仕方ない。この番組はメアリーの遺志を継ぐ番組ニャ』
しばらくしてザラメが口を開いた。
『アシスタントは猫と決めていたが、メアリーのお墨つきならテストくらいはしてやるニャ』
「は?」
『アシスタントの試用期間てやつですね』
シナモンが補足するように言った。
「いや、働かな――」
『お前、名前は?』
こちらの話に全く聞く耳を持たない。よく聞こえそうな耳をしているというのに。
「根岸――」
『『ネギ!?』』
二匹は揃って憎憎しそうな声を出し、眉間を寄せた。
『ネギは猫の天敵ニャ』
『呼びたくない名前ですね』
あまりの言い草にちょっぴり腹が立つ。
「あのねぇ。ひと様の名前にケチをつけるなんて品がないわよ。それに私は下の名前で呼ばれることが多いの。津奈子って」
『『ツナ!?』』
また声が重なった。今度は目がキラキラと輝いている。
『イケてる名前ニャ』
『センスがいいですね』
もちろん私の名前は〝マグロ〟由来のツナではないのだけれど、羨望の眼差しを向けられる分には悪い気もしない。二匹の表情が可愛くて、ついクスリと笑ってしまった。
『よし、ツナ! 来週月曜のこの時間にまた来いニャ。ゲスト抜きで練習させてやるニャ』
「いやだから、働かないって――」
「あのぉ……」
突然、女性の声が聞こえてまたビクリと驚いてしまった。
そして彼女こそが、ここでコミュニティFMの番組を放送していた人物だったのだ。
だけど、高齢だった彼女は今年の初めに亡くなってしまった。胸がキュ……と小さく軋む。
『なんでメアリーがお前にラジオをやるのニャ!』
ひときわ訝しんだような口調で問い詰められた。
「なんでって……。私、大学でラジオ同好会に入っているの。それで会誌に載せる記事でメアリーにインタビューをさせてもらって」
――『あなた本当にラジオが好きなのね、嬉しいわ。これ、良かったら使ってくれないかしら』
彼女はもう使わないからと、このラジカセをくれた。
「録音もできて便利だから、ラジオ好きな若者の役に立てて欲しいって」
実際カセットテープでインタビューの録音なんかもしていて、アナログ感が楽しいし案外重宝している。
「そうか……」
私の答えにザラメはポツリとつぶやいて、考え込むように黙ってしまった。
『……それなら仕方ない。この番組はメアリーの遺志を継ぐ番組ニャ』
しばらくしてザラメが口を開いた。
『アシスタントは猫と決めていたが、メアリーのお墨つきならテストくらいはしてやるニャ』
「は?」
『アシスタントの試用期間てやつですね』
シナモンが補足するように言った。
「いや、働かな――」
『お前、名前は?』
こちらの話に全く聞く耳を持たない。よく聞こえそうな耳をしているというのに。
「根岸――」
『『ネギ!?』』
二匹は揃って憎憎しそうな声を出し、眉間を寄せた。
『ネギは猫の天敵ニャ』
『呼びたくない名前ですね』
あまりの言い草にちょっぴり腹が立つ。
「あのねぇ。ひと様の名前にケチをつけるなんて品がないわよ。それに私は下の名前で呼ばれることが多いの。津奈子って」
『『ツナ!?』』
また声が重なった。今度は目がキラキラと輝いている。
『イケてる名前ニャ』
『センスがいいですね』
もちろん私の名前は〝マグロ〟由来のツナではないのだけれど、羨望の眼差しを向けられる分には悪い気もしない。二匹の表情が可愛くて、ついクスリと笑ってしまった。
『よし、ツナ! 来週月曜のこの時間にまた来いニャ。ゲスト抜きで練習させてやるニャ』
「いやだから、働かないって――」
「あのぉ……」
突然、女性の声が聞こえてまたビクリと驚いてしまった。



