一瞬で頭が真っ白になった。
『ニャーーーー!!』
だって、ガラスの向こういるのは、目の前でこちらに気づいて口をパクパク動かしているのは――。
「ね……こ……?」
『ニャ!! 誰ニャお前!』
『ニンゲン!?』
私に向かって投げられている言葉は、イヤホン越しに耳に届く。
『お前は誰ニャ!』
言ったのは、ラジオブース内のデスクの上にいる猫のようだ。全身マダラの焦げ茶色をしていて、首にはヘッドホンをかけている。
猫が? 喋っている?
『今日のゲストはもういるニャ』
あまりの光景に呆然としながら、きっとこれは夢だと思い始める。
――ガチャリ……
その音にビクリと肩を上下させ右を見ると、スタジオのドアが開く。茶トラの猫が顔を出したかと思うと、こちらに向かってピョンとジャンプした。
「え!? な、なに!?」
猫は私の身体をペタペタと、確かめるようにくまなく肉球で触っていく。
そのぷにぷにとして温かな感触はリアルで夢とは思えない。
『ザラメさん、生身のニンゲンみたいです!』
猫は私の肩に前脚をかけてしがみついている。
生身の人間?
どういう意味だろう。
『にゃんだって!? 生身のニンゲンがこの時間にここに来られるはずは……』
猫に驚いて気づかなかったけれど、スタジオの中には突っ伏した女性がいる。肩が小刻みに上下していて泣いているようだ。
やはり先ほどのラジオはここから放送されていたんだ。
いや、これは夢なんだから、電車の中からずっと夢を見ているってこと? 頭の中がぐるぐる回って混乱してくる。
『おい! お前!』
急に近くで大きな声が聴こえたと思ったら足下に『ザラメ』と呼ばれた猫が立っている。立っているのだ、二本の短い脚で。猫にしては随分と大きいような気もする
『ここで何してるニャ!』
「……な、何って……ラジオのアシスタントの面接に……」
来たはずなのに。なぜか夢の中。
「で、でも間違えたみたい……猫がラジオをやってるなんて、そもそも人間の言葉で喋るなんて」
どうしたら目が覚めるのかわからない夢だけれど、ここはひとまず家に帰ろう。
『間違いじゃないニャ!』
「え?」
『お前が聴いたのは『ねこねこレディオ』のアシスタント募集ニャ』
それは今の今まで聴いていた番組名。
『だけど確かに言ったはずニャ』
本当に猫が喋っている。しかも腕を組んで、偉そうに。
『リスナーの中でラジオに興味のある猫は面接来い、とニャ』
「え!? 猫!?」
――『じゃあリスナーのみんなの中でラジオに興味のある――ガガ――は面接にくるニャ』
電波が悪くて肝心なところが聴こえていなかった。というより、まさか猫を募集する求人(求猫?)があるなんて思いもしなかった。
って、なんでこの状況を受け入れ始めているのよ、私は。
「そうでしたか。では、お呼びでないみたいなので私は」
そろりと一歩、後退りをした。
『ちょっと待つニャ!』
「へっ?」
『お前、なんで俺たちの言葉がわかるのニャ』
『ニャーーーー!!』
だって、ガラスの向こういるのは、目の前でこちらに気づいて口をパクパク動かしているのは――。
「ね……こ……?」
『ニャ!! 誰ニャお前!』
『ニンゲン!?』
私に向かって投げられている言葉は、イヤホン越しに耳に届く。
『お前は誰ニャ!』
言ったのは、ラジオブース内のデスクの上にいる猫のようだ。全身マダラの焦げ茶色をしていて、首にはヘッドホンをかけている。
猫が? 喋っている?
『今日のゲストはもういるニャ』
あまりの光景に呆然としながら、きっとこれは夢だと思い始める。
――ガチャリ……
その音にビクリと肩を上下させ右を見ると、スタジオのドアが開く。茶トラの猫が顔を出したかと思うと、こちらに向かってピョンとジャンプした。
「え!? な、なに!?」
猫は私の身体をペタペタと、確かめるようにくまなく肉球で触っていく。
そのぷにぷにとして温かな感触はリアルで夢とは思えない。
『ザラメさん、生身のニンゲンみたいです!』
猫は私の肩に前脚をかけてしがみついている。
生身の人間?
どういう意味だろう。
『にゃんだって!? 生身のニンゲンがこの時間にここに来られるはずは……』
猫に驚いて気づかなかったけれど、スタジオの中には突っ伏した女性がいる。肩が小刻みに上下していて泣いているようだ。
やはり先ほどのラジオはここから放送されていたんだ。
いや、これは夢なんだから、電車の中からずっと夢を見ているってこと? 頭の中がぐるぐる回って混乱してくる。
『おい! お前!』
急に近くで大きな声が聴こえたと思ったら足下に『ザラメ』と呼ばれた猫が立っている。立っているのだ、二本の短い脚で。猫にしては随分と大きいような気もする
『ここで何してるニャ!』
「……な、何って……ラジオのアシスタントの面接に……」
来たはずなのに。なぜか夢の中。
「で、でも間違えたみたい……猫がラジオをやってるなんて、そもそも人間の言葉で喋るなんて」
どうしたら目が覚めるのかわからない夢だけれど、ここはひとまず家に帰ろう。
『間違いじゃないニャ!』
「え?」
『お前が聴いたのは『ねこねこレディオ』のアシスタント募集ニャ』
それは今の今まで聴いていた番組名。
『だけど確かに言ったはずニャ』
本当に猫が喋っている。しかも腕を組んで、偉そうに。
『リスナーの中でラジオに興味のある猫は面接来い、とニャ』
「え!? 猫!?」
――『じゃあリスナーのみんなの中でラジオに興味のある――ガガ――は面接にくるニャ』
電波が悪くて肝心なところが聴こえていなかった。というより、まさか猫を募集する求人(求猫?)があるなんて思いもしなかった。
って、なんでこの状況を受け入れ始めているのよ、私は。
「そうでしたか。では、お呼びでないみたいなので私は」
そろりと一歩、後退りをした。
『ちょっと待つニャ!』
「へっ?」
『お前、なんで俺たちの言葉がわかるのニャ』



