五分ほどの緊張感ある沈黙の後、ザラメが口を開いた。
「た、頼む……ニャ」
「ん?」
「ニャ……」
アンバーさんは、足りないと言っている。
この人……ドSだ。
ザラメは覚悟を決めるように深呼吸をした。
そして、深々と頭を下げた。
「お願いします。ラジオ番組をやらせてくださいニャ。それに悪口も……悪かった、ニャ」
その様子に一番驚いた表情を見せたのはシナモンだった。つまりそれほど珍しい光景なのだ。
「よくできました」
アンバーさんは満足そうに微笑んだ。
「さて、それでは津奈子さんの雇用の件ですが」
「ま、まだ何か条件が?」
心臓がドキドキしている。
「いえ。せっかくなので、トーティのスタッフとラジオスタッフを掛け持ちしていただけないかと。猫のラジオではまともな給料も出せませんし」
「え!?」
全く想像もしなかった申し出だ。
「で、でも、私ドジなので……」
「うちの食器は高級ですから。他より緊張感を持って働いていただけると思いますよ」
やっぱりドSな提案だ。
「それに、うちのスタッフはザラメとの相性が大事なんです」
その言葉に、ザラメの方にチラリと視線を送る。
「メアリーが亡くなってから雇ったスタッフは、みんなザラメが意地悪をして辞めさせてしまいましたから」
ザラメは気まずそうに明後日の方向を向いた。
「その点あなたなら、ザラメとの相性も悪くないようだ」
「う、うーん……そうですかね」
私だって嫌味を言われている。
「メアリーのラジカセを取り上げないのが証拠です」
そうなのだろうか。
「スタッフが一人増えてくれれば、私もラジオブースに入る時間が作れますし」
「え! それはすごく聴いてみたいです」
アンバーさんの声は絶対にラジオやナレーションに向いている。
「もう聴いてるニャ」
ザラメが不機嫌そうにボソッとこぼした。
「ん? どういう意味?」
「『スターダスト・ティータイム』はアンバーさんの番組なんです」
シナモンの言葉は瞬間的には全く理解できなかった。
――『『スターダスト・ティータイム』はアンバーさんの番組なんです』
「え」
――『『スターダスト・ティータイム』はアンバーさんの番組なんです』
「え」
――『『スターダスト・ティータイム』はアンバーさんの番組なんです』
「えーーーーーー!?」
頭の中が宇宙になって、言葉が駆け巡る。
「嘘でしょ!? じ、じゃあアンバーさんが……コハクさん、ってこと!?」
思わずアンバーさんの方を見て言ってしまった。
「猫たちはね、私の留守を狙って番組を放送していたんですよ」
確かに『ねこねこレディオ』は『スターダスト・ティータイム』の裏番組だ。
辻褄は合うけれど……にわかには信じがたい。
「証拠が聞きたいようですね」
ガラスの向こうのアンバーさんは喉の調子を整えるように咳払いをした。
「僕とはまた後ほど。Stay tune」
コハクさんのお決まりのセリフをコハクさんの声で聞く。
耳に響いた低音ボイスは間違いなく本物。
「すごい。私でも知ってる声」
福田さんも興奮気味だ。
「どうでしょう。トーティとラジオの掛け持ち、受けてもらえそうですか?」
「は、はいっ!」
背筋にピン! っと力が入る。
「お、おいツナ! お前が働くラジオはアンバーの番組じゃないニャ! わかってるのかニャ!」
「え? あ、そ、そうだったね。わかってます」
慌てて親指を立てて〝グー〟のハンドサインを送る。
ザラメに「しっかりするニャ!」と叱られたけれど、気づけばみんなが笑っていた。
迷子の電波から、こんなサプライズにつながるなんて、魔法よりもびっくりしてしまう。
これからどんなお悩みのある人に出会うのだろう。
ドキドキするけれど、とっても楽しみ。
次の放送の日まで、どうかあなたも
Stay tune🐾

fin.
「た、頼む……ニャ」
「ん?」
「ニャ……」
アンバーさんは、足りないと言っている。
この人……ドSだ。
ザラメは覚悟を決めるように深呼吸をした。
そして、深々と頭を下げた。
「お願いします。ラジオ番組をやらせてくださいニャ。それに悪口も……悪かった、ニャ」
その様子に一番驚いた表情を見せたのはシナモンだった。つまりそれほど珍しい光景なのだ。
「よくできました」
アンバーさんは満足そうに微笑んだ。
「さて、それでは津奈子さんの雇用の件ですが」
「ま、まだ何か条件が?」
心臓がドキドキしている。
「いえ。せっかくなので、トーティのスタッフとラジオスタッフを掛け持ちしていただけないかと。猫のラジオではまともな給料も出せませんし」
「え!?」
全く想像もしなかった申し出だ。
「で、でも、私ドジなので……」
「うちの食器は高級ですから。他より緊張感を持って働いていただけると思いますよ」
やっぱりドSな提案だ。
「それに、うちのスタッフはザラメとの相性が大事なんです」
その言葉に、ザラメの方にチラリと視線を送る。
「メアリーが亡くなってから雇ったスタッフは、みんなザラメが意地悪をして辞めさせてしまいましたから」
ザラメは気まずそうに明後日の方向を向いた。
「その点あなたなら、ザラメとの相性も悪くないようだ」
「う、うーん……そうですかね」
私だって嫌味を言われている。
「メアリーのラジカセを取り上げないのが証拠です」
そうなのだろうか。
「スタッフが一人増えてくれれば、私もラジオブースに入る時間が作れますし」
「え! それはすごく聴いてみたいです」
アンバーさんの声は絶対にラジオやナレーションに向いている。
「もう聴いてるニャ」
ザラメが不機嫌そうにボソッとこぼした。
「ん? どういう意味?」
「『スターダスト・ティータイム』はアンバーさんの番組なんです」
シナモンの言葉は瞬間的には全く理解できなかった。
――『『スターダスト・ティータイム』はアンバーさんの番組なんです』
「え」
――『『スターダスト・ティータイム』はアンバーさんの番組なんです』
「え」
――『『スターダスト・ティータイム』はアンバーさんの番組なんです』
「えーーーーーー!?」
頭の中が宇宙になって、言葉が駆け巡る。
「嘘でしょ!? じ、じゃあアンバーさんが……コハクさん、ってこと!?」
思わずアンバーさんの方を見て言ってしまった。
「猫たちはね、私の留守を狙って番組を放送していたんですよ」
確かに『ねこねこレディオ』は『スターダスト・ティータイム』の裏番組だ。
辻褄は合うけれど……にわかには信じがたい。
「証拠が聞きたいようですね」
ガラスの向こうのアンバーさんは喉の調子を整えるように咳払いをした。
「僕とはまた後ほど。Stay tune」
コハクさんのお決まりのセリフをコハクさんの声で聞く。
耳に響いた低音ボイスは間違いなく本物。
「すごい。私でも知ってる声」
福田さんも興奮気味だ。
「どうでしょう。トーティとラジオの掛け持ち、受けてもらえそうですか?」
「は、はいっ!」
背筋にピン! っと力が入る。
「お、おいツナ! お前が働くラジオはアンバーの番組じゃないニャ! わかってるのかニャ!」
「え? あ、そ、そうだったね。わかってます」
慌てて親指を立てて〝グー〟のハンドサインを送る。
ザラメに「しっかりするニャ!」と叱られたけれど、気づけばみんなが笑っていた。
迷子の電波から、こんなサプライズにつながるなんて、魔法よりもびっくりしてしまう。
これからどんなお悩みのある人に出会うのだろう。
ドキドキするけれど、とっても楽しみ。
次の放送の日まで、どうかあなたも
Stay tune🐾

fin.



